フィルム写真のデジタル化

目的

フィルムカメラをデジタル化する上で必要な基本的な知識を示す。


新橋演舞場
昭和30年頃 築地川萬年橋から

写真の基礎知識

写真の基本的な知識は別途設けたこのページなどを参照されたい。ここでもある程度説明はしているが、フィルム写真とデジタル写真の理解を深めるための基本的な知識があることを前提としている。

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デジタル化の基本

フィルム写真をデジタル化するには、何らかの方法でフィルムやプリントをスキャン(複写)するが、その際のポイントをいくつか記す。

解像度

解像度は色々な意味で曖昧に使われれることが多いが、ここで問題とするのは、フィルムやプリントが持っているどこまで細かい図柄を表現できるかということである。
フィルムやプリント側の解像度を決める要素としては

  1. フィルムやプリントの銀粒子の粒状度
  2. 撮影したカメラなどのレンズを含めての解像度、プリントではプリンタの解像度

このうちの粗い方が実際の解像度となり、デジタル化するにはそれ以上の解像度を持っていないと、元の写真の情報を十分にコピーできない。
リバーサルフィルムはネガフィルムより一般に粒子が細かくデジタル化するときはより高い解像度が必要になる。
デジタル化の対象のフィルムは、サイズが豊富で大きいサイズほど銀粒子が相対的に細かくなる。
プリントされた写真もデジタル化の対象だが、引き延ばし倍率が小さい場合などは印画紙の解像度の方が低い場合も出て来る。

昔、一生懸命きれいな解像の写真を撮ろうと努力してきた人にはショックな話かもしれないが、最近のデジカメと比べると、フィルム写真の解像度は記憶に残っているほど高くない場合が多い。
昔は大判のカメラが幅を効かせていたが、デジカメにほとんど取って代わられたのは、便利さもあるが、シャープさでもかなわないというのも理由のひとつだろう。
一次、いくつかあった6x6版のデジカメは、その解像度のきれいさは度肝を抜くほどで、写真はどれだけすごい世界に向かって行くのかと思っていたのに、商業的にはどれも成功せず、大判のデジタルカメラは、細々と生きながらえるだけになったのには、普通の用途に使うには小型カメラで十分な解像度があるというのも一因だろう。人間には解像度でもなじめる限度のようなものがあり、解像度が高ければ良いというものでもなさそうである。

ラインセンサ式

ラインセンサは、コピー機などについている、一直線上に並んだ光学センサーで端から順番にセンシングしていくことで平面を写し取る撮影装置である。
一気に処理する必要がなく順番に処理すれば良いような場合には、一列に並べたときの光学性能さえあればいいので、大きな幅のものを精度よく簡単に作り易いという利点がある。またカラーの受光素子の配置を縦一列に各色並べて順番に走査すればモアレの中の偽色という厄介な問題を全く気にしなくてよくなるものもある。(RGBの三色のほかに明るさのみのものを加えて4色のものもある)
ただし、RGBを横に並べたものの偽色が発生するものの方が安価のようである。
昔あったニコンのフィルムスキャナは、LEDのRGB光源を高速に切り替えることでスキャンしていたらしい。LEDは高速にオンオフできるのでラインセンサーにフィルタを付けてカラー化するよりも偽色対策以外でもメリットがあるかもしれない。
当然スキャンする方法を工夫しなければならないので撮影の方法が限られスキャンの精度が確保される方法でなければいけない。
工場の流れる製品を読み取るラインセンサー型のカメラは、離れたところから撮影するが。コピー機などでは、センサーと撮影対象が大きさ的に1対1に直接対応したものが多く幅の広いセンサーを使うので、レンズで縮小する方式に比べて高い精度が得られ易い。
コピー機などでは、デジカメの撮像板のような精度は必要としないが、35㎜のような普通の小さなフィルムをスキャンしようとするとコピーで必要とする精度では不足するだろう。
印刷した写真の場合は、家庭用のプリンタの複合機でスキャンできる場合も多い。ただし、文書の読み取りでは、色よりの自然さよりも文字の認識に力点が置かれるので、写真用のスキャンモードがなければ画質が思ったようにでない場合もあるだろう。
なお、文書用のスキャナでよく使われるpdf形式は、JPEGなどの写真用のファイルに簡単に変換できる場合が多い。

フィルムのスキャン用に設計すれば、精度よく高性能なものを作り易い。

エリアセンサ(デジカメ)式

普通のデジカメのようにレンズを使って一挙に全範囲の画像を取り込む方法である。
エリアセンサーはデジカメで非常に多く作られているので安価に入手しやすく、デジカメそのものをスキャン用として利用することも可能である。
よく使われている35㎜サイズのフィルム専用のスキャナとして比較的安価に売られているものも多い。

値段の割には意外と使えるものも多いような気がする。

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諧調(明暗の幅)

ダイナミックレンジとも呼ぶ明暗の幅に関する問題である。
プリントや印刷物の場合は、持っている諧調の幅が広くないので、JPEGの形式で取り込む際の色深度で問題が起きにくいが、ネガフィルムの場合は、持っている明暗の情報がかなり広い場合が多く、普通のデジカメなどで記録できる明暗の差をはるかに超える場合もある(ただしその場合はフィルムの粒子は粗くなる)。
それに対処するにはデジカメでは露出を調整して写し取る濃度範囲を決定するのが普通の方法である。必要なら露出を変えて数枚撮るという方法も現実的な解決法になる。
RAWデータを扱えるデジカメを利用できる場合は、それが役に立つ場合もある。
専用のスキャナでは、幅広い濃度に対してどう処理するか決めてスキャンするという方法を取れるものもあるはずである。
ネガ―カラーの場合は、オレンジマスクにより色に大きなバイアスがかかるのでそのままオレンジ色に撮ると後処理で色を補正する場合に、色の情報が不足する。色温度の設定を使うなどしてバイアスを減らしてネガになってはいても色が均等に存在するように写せばこの問題は効果的に対応できる。デジカメなどを使う場合は色温度の設定をオートをワイトバランスやその他のモードを試してもっともいい結果になるものを使えば良い。

いづれにしろ思ったような画質に近づけるには画像編集ソフトの助けが必要である。

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ピント

フィルムは結構反っているので、撮影時のピントの合う範囲(被写界深度)が狭いと撮影時に気を使うことになり大変である。
安いエリアセンサー型のスキャナーは小さな撮像板がほとんどなので被写界深度が深く、高いデジカメの高性能の某遠景のマクロレンズよりはずつとピントの問題はすくなくなる。
ただし、厚み方向に存在する他の埃なども鮮明に映る原因になるかもしれない。

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スキャン速度

昔は、コピー機のようなフラットベッドスキャナでフィルムにも使えるものが結構普通に売れれており、自分もフィルムのスキャン用に買って、意気揚々と始めたが、あまりの速度の遅さに挫折したことがある。
まずフィルムのゴミを念入りに撮ってスキャナにセットし、予備スキャンした後で正式なスキャンを行う。スキャンだけの時間が何十秒も掛かる。
ようやくスキャンしたものをパソコンに取り込んで大きくしてチェックしてみると階調などが気に入らないということは普通にあり、もう一度行うと今度はゴミがついていた、なんてことを何度も繰り返せば、このろくでもない機械を棚の隅に置くようになり、場所を食うので天袋にさらに追いやられ、余分なものを整理しなければいけないときに再度挑戦したもののそれがゴミとして出す決め手のなったなんてことがある。
ま、ちゃんと使えなかった自分が悪いんですが、今でもスキャンが数秒で終わるということはないだろうし、USB3.0以上の高速転送を使っても高精度で編集しようとするとファイルサイズが巨大になるので転送時間もそこそこかかるだろうから、フィルムの高性能なデジタル化には、おおらかな心が必要でしょう。あまりちゃんとしたものを作ろうと意気込み過ぎない方が良いかもしれない。
結局自分の場合は、フィルムをセットしたら1,2秒でスキャンが完了する安物の専用のスキャナのおかげで大量のデジタル化に成功したようなものである。
取り敢えず、画質やゴミなど気にせずにスキャンして、後で写真編集ソフトで画質もゴミも処理して必要ならば、もう一度スキャンするなり外に出してスキャンしてもらうなりすれば良いと思えば気が楽である。

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ゴミ取り

フィルムにはゴミや埃がつきものである。保管状態やフィルム現像時の問題で見事なくらい埃や汚れが一杯ついている場合もある。
折角フィルムを丁寧にゴミを取ってスキャンしたのに、スキャンの機械についていたゴミを発見した時は、その機械をぶん投げたくなる衝動を抑えるのに苦労するなんてことも起きるだろう。
しかし、写真編集ソフトのゴミ取り機能を使えば魔法のようにゴミが消えるということを知っていれば、おおらかな気持ちに成れる。
この編集ソフトによるゴミ取りは、コツさえつかめば、次々と消すことができ、電線なども簡単に写ってなかったことにできるくらい、眼で見たくらいでは後で消したということがわからにくらいきれいに消すことができる。
ゴミは拡大すれば際限なく見えて来るので、ゴミ取りにのめり込んでしまう人は決して少ないことだろう。
フィルム写真では、スポッティングという修正作業が必須で、ポートレートなどはついでに顔の輪郭や目鼻立ちを修正し、しわなども、なかったように修正する腕がポートレート屋さんの人気を左右する重要な腕だったりするが、デジタル化しても同じだと思えば良い。
ただし、輪郭や形状を変えるのに必要な絵心はソフトでなく人間の腕の問題だろう。
ゴミや電線などを消すのはもっと簡単な似たような模様で埋めるだけと技術なので、画のセンスよりは、原理を知って真面目にこつこつ対応するば人間の眼では区別が付きにくいくらいお修正は簡単にできる。
なお、この機能は高度な機能だが、有料のソフトでなくてもフリーのGIMPでも十分以上に使い物になる。
フィルム写真をデジタル化する上でのキーポイントでもある。

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実際のスキャンへのヒント

どの方法が良いかは、好みもあってむずかしいが、個人的な感想ながら出来るだけ一般的と思われる視点で述べる。

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フラットベッド型スキャナー

お金があるなら、ラインセンサー式でフィルムやプリントを一気にスキャンするフラットベッド式のものが良いかも。
欠点は、価格と、大きさに、速度である。
それと古い機種しかなさそうなこと。ただのフラットベッドスキャナーじゃなくフィルム対応じゃないといけないので、かなり前のEPSONのものが最新式かもしれない。
RGBを縦に並べて偽色が起きないようにしたものがどれだけあるかは知らないが、フラットベッド式などのラインセンサー型の方が高性能なものが多いような気がする。
以前はもっと小型の35㎜フィルム専用のもの何社かから売られていたが今はほとんど見かけないのは、需要が少ないからなんでしょうか?
今、昔はよく見かけたフィルムホルダーでスキャンするものは、台湾のPlustekというところのものである。これも魅力的な言葉が一杯並んでいるが、センサーはCCDとあるだけでラインセンサーと書いてないが、スキャン時間から見て多分そうだろう。
ただし、価格ドットコムに載っていた実際のスキャン画像がなぜかひどいのがちょっと気になる。くてこれなら安いものを画像処理した方が増しそうだと思ったが、性能が悪いというよりも使い方が難しいのだろう。標準以外の機能を使おうとすると途端に速度が遅くなるという話もある。

EPSONの方は、さすがに使いやすそうで、埃はともかく、色の調整もし易そうである。
ただしいずれにしろ、手間暇かかるのは間違いなさそうで、大量にある写真を片付けるにはかなりの覚悟がいりそうである。

やはり使う人が良ければきれいに撮れるのかもしれない。
analogue life EPSONのもplustekのも両方あるが、きれいにスキャンできている。

エリアセンサー型スキャナ

このタイプは手軽にしゃかしゃかデジタル化できるのが最大の利点だろう。デジカメの撮影と同じようなことをしているので数秒以上もかかったら、よほど複雑な処理をしているか、機能が低すぎるかどちらかだろう。
その代わり、解像度が高いものが少ないとか、フィルムの淵までスキャンできないとか、細かい露出の設定がしにくいとか機能面でフラットベッドタイプなどの高級な機種よりは劣るものがおおいようだ。
ただし、手軽に高速に行えるというのは大きな魅力になるだろう。
フィルムが数百本あるという人はアマチュアでも珍しくないだろうが、お金があれば、写真屋さんに出して、その中で良さそうなのを手間暇かけて上のフラッドベッドタイプなどのラインセンサ式の高機能機種で行うというのが、お大尽の優雅な方法かもしれない。
もっとも昔のフィルム写真はポジを除けば、昔はあれだけシャープさに気を付けて撮った写真なのに、びっくりするくらい低画質なので(それだけデジカメは高精細になっている)意外と満足するかもしれない。GIMPなどで修正すれば、パソコンやスマホなどのWEBデータとしては十分かもしれない。

エリアセンサー型では、ネガフィルムなら1000万画素あれば、粒状性の正確ではないにしても普通に見る分には十分伝わるのではと思う。

エリアセンサー型でも、モノクロの撮像板にLEDの照明を変えて撮影することでカラー化する、ダイナミックレンジを広くしてモニターで瞬時に状態を表示するなどすれば、快適で高機能なものができる可能性はある。問題は、需要がそれほど大きいわけではないことか?

デジカメで撮影

エリアセンサー型は、デジカメで撮影するのと似た仕組みなので、当然デジカメでフィルムやプリントを撮影しても良い。
プリントの撮影は、平らになるように工夫し、照明が反射しないように注意して三脚などでセルフタイマーを使って撮るなどすれば割と簡単であるが、むらなく反射なく照明を当てるのが印画紙には、結構むずかしい。真四角に水平にきちんと撮れていなくてもGIMPならゆがみを簡単に補正できる。
フィルムは後ろから透過光源で照明すれば、意外と簡単にきれいに撮れる。透過光減としてはこの写真のようにして後は、適当な光源に向けて撮れば、拡散板(白色のアクリル板)腰なので驚くほどきれいに撮れる。
RAW形式でとれば、ダイナミックレンジも拡がる。
欠点は、マクロで撮れるカメラがないといけないのと、この装置がちゃちな割に高いことである。
利点は、一度撮影条件を決めればシャカシャカ撮れることだろう。

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ライトボックス・トレース台

ちゃんとしたライトボックスは高いが、最近はトレース台などと称してLED照明のついたA4くらいの大きさのライトボックスが安く出ている。
上のデジカメで撮影の撮りかたを工夫したものである。
メリットは2000円ちょっとくらいで手に入るライトボックスとカメラを固定するスタンドがあれば、「できるかな」の工作程度で試すことができることである。
ライトボックスも白の拡散板で照明が均一にになるようになっているが、気になるなら白い拡散板を追加で載せて、ついでにフィルムを平らに置くための抑えるフレームをフェルトを張るなどして作り、真上からとるスタンドを用意すれば、部屋の明かりを暗くして撮れば高性能なカメラを生かしたスキャンができる。

上の写真のいい加減なセットで、マクロ可能なRAW撮影可能なコンデジで6x6のモノクロネガフィルムを撮った画と編集後の写真を示す(クリックで拡大)。

撮影画像 GIMPで修正

ネガは写真編集ソフトで編集しなければいけないが、ついでに撮影時にゆがみを直し、RAWデータなら露出を調整し、トリミング、トーン調整、ゴミ取りをして、ローライで撮った端っこで状態の良くない6x6のフィルムでこれだけデジタル化できたらまあ、十分だろう。
左の赤丸は大きなゴミだが、修正跡を見つけるソフトなどを使うなどしなければまずわからないだろう。

35㎜以上のフィルムは、スキャンする方法がフラットベッド式など数少ないが、この方法を使えば易くてけっこうまんぞくできるデジタル化が可能になる。

このおばあさんは博多弁の訛りが激しくて、「お小遣い上げる」という言葉以外は、よくわからなかったが、たくさん残っていた6x6のフィルムのおかげで、いつもやさしい顔をして写っていたのが思い出される。

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ドキュメントスキャナ

ドキュメントスキャナは、なぜか「自炊」と妙な呼ばれ方もが印刷物をどんどん読み込んでデジタル化してくれる家や職場から紙の資料を一掃してくれる力強い見方である。
これらの中には写真をどんどん読み込んでJPEGで吐き出してくれるものものがある。ドキュメントスキャナはPDFファイルが標準だが、スキャナの場合は、中身はJPEGとほとんど変わらないので、写真向きの階調をサポートしていれば、プリントされた写真を高速に取り込んでくれる頼もしい装置になる。
PDFファイルにすれば、開くソフトはPDFに対応したPDFリーダーやPDFに対応したブラウザになるが写真の順番やサイズが重要な場合は、それが記録出来るし、編集も付属のソフトでできる場合が多いだろう。
なお、ドキュメントスキャナでスキャンした場合は、写真のサイズが正確にインチあたりのドット数(DPI)の解像度が設定されるのが普通である。GIMPでは、印刷サイズの設定という項目で設定できる。
ただし結構高いので、ドキュメントスキャナとして使わない人にはもったいないかも。
この手の簡易型でローラーを自分で動かしてスキャンするタイプもある。器用さにもよるが、値段が安ければ使えないこともない程度に考えた方が良いかも知れない。うまく行かないと、ぶん投げたくなる人も出て来るだろう。

pdfの編集ソフトは値段が高いので編集ソフト付のドキュメントスキャナがお得かも。(あれ、新しいScanSnapはAdobeのAcrobatが標準添付じゃないんですね)


上の写真は横幅15.7cmの写真を読み込んだものだが、元のプリントの解像度を完全に超えている。

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店に頼む

自分は、外注に頼んだことはないが、意外とこの選択肢は重要かもしれない。とくに大量にスキャンする写真がある場合でも、スクリーニングのように安くて早くて画質はそこそこのもので大量にスキャンして、もっと高画質にしたい場合だけ写真屋さんに高画質のスキャンを頼むというのは考慮した方が良い。
なお、普通に頼むと意外と高画質にはならない場合もあるので、最初から過大な期待をしない方が良いかもしれない。
デジタル化といっても最終的には、作業する人のセンスが問われる場合が多い。よほど多く仕事を出して好みを覚えてもらわない限り、自分の好みにはならないだろう(自分の場合は、お店のセンスに任せた方が良くなるかも位知れない怖さを回避するために、多分多少無理してでも良いスキャン装置を考えるという、身の程を知る人間ばかりではないので)

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